【書評】”5年後、メディアは稼げるか”を5年後の今読んでみた
こんばんは。
Goodbye Sundayです。
いいペースで本を読み進めており、非常に楽しい毎日です。大雪で電車の移動がしんどかったですが、おかげで本が一冊読めました。
この本は2013年に書かれたもので、現在のNewsPicks編集長が執筆していたものです。
タイトルの”5年後”がちょうど今年で面白そうだったので、手に取りました。今のNews Picksの好調ぶり、マネタイズの手法をのぞくと、この本がいかに示唆に富むものがは説明しなくても分かるかと思います。
物事の考え方や本質の捉え方など、本当に勉強になり、久々の読書でしたがスイスイ読むことできました。
- ①デジタルの世界では、読者は各媒体をつまみ食いする
- ②これからの時代は企業もコンテンツの作り手になる
- ③WEBメディアでは、タイトルが10倍重要
- ④オープンすぎるのは、リスクでもある
- ⑤広告以外の有料化のヒントはネット企業にあり
- ⑥人間を介さないシステムだけで、読者が満足する日は永遠にこない
- ⑦文章術を学ぶには『文章読本』
- ⑧マネタイズは二の次
①デジタルの世界では、読者は各媒体をつまみ食いする
雑誌や新聞のように媒体まるごと読むという習慣が薄れ、読者は各媒体をつまみ食いするしながらニュースを消化するようになります。そこで、ニュースを選ぶ基準となるのは、「どの媒体か」よりも「誰が書いたか」「どんなテーマか」です。
まさに今のNews Picksはこれを体現しています。ホリエモンのような前衛的な著名人が拾う記事を、ビジネスの前線に立っている方たちがコメントをつけて、議論する。
一般人からすれば、無数に溢れるニュースよりも、その記事およびコメントを読んでおけば無敵!のような気分になりますよね。
これはグノシーやスマニューのようなアルゴリズムが拾ってくるニュースとは訳が違います。誰が選んで、誰がどんなコメントをしているかが重要なんです。
②これからの時代は企業もコンテンツの作り手になる
自社や自社製品のいいところばかりを強調する従来型の広告では、消費者の心をつかむのが難しくなってきています。そうした背景もあり、自社と直接関係のないテーマも含めて、コンテンツという形で情報発信を行う企業は増えてくるでしょう。
ブランドコンテンツともいうべきものでしょうか。
例えば、ミシュランというタイヤの会社がありますが、ミシュランは本業を直接的にPRしたわけではなく、レストランにミシュランのお墨付き(★)を与えるミシュランガイドで、結果的に企業認知を獲得する結果となりました。コンテンツの価値が広告につながってくると既に読み切っていました。
実際News Picksが展開する広告コンテンツは、ストーリー仕立てになっており、読み物として面白いものが多いです。まじすごい。
③WEBメディアでは、タイトルが10倍重要
Webメディアでは、タイトルこそが何を差し置いても重要。
タイトルを見て、「面白い、読みたい」と思ってもらえなければ、チラ読みすらしてもらえません。
なるほどなあ。当たり前といえば当たり前ですが、これを強烈に意識してる編集者となあなあにやってる編集者とでは、差が出るのは当然ですね。これはブログ運営でも同じことが言えますよね。
④オープンすぎるのは、リスクでもある
人々はオープンすぎるものには、プレミアム感を抱きません。誰でも入れる大学や企業、レストランではなく、選ばれた人だけが参入を許される場所に権威性やブランドを感じるものです。
これは、メディアのマネタイズの話ですが、オープンとクローズドのそれぞれのメリットを開示してくれています。今のNews Picksは、月額1500円という高価格で会員を獲得し、ハイエンドなビジネスマン向けのコンテンツを展開しています。実際に形にしててまじですごい。
⑤広告以外の有料化のヒントはネット企業にあり
ニコニコ動画やクックパッドのプレミアム会員モデルなど、ネット企業の成功例からWebメディアは貪欲に学ばなければなりません。ネットメディアができるのは思いつきレベルでもたくさんあります。
「広告表示もページ分割もない、特別なレイアウトを提供する」
「無料のイベントに会員を優先招待する」
「好きな筆者に質問を送ることができる」
「自分の興味にあったパーソラナイズ機能を追加する」
「世界中の企業を網羅した、企業検索サービスを使える」
などなど、考えうるオプションを総動員し、コンテンツを組み合わせて有料会員を募る。
メディア収入のなると「アドセンス」「アフィリエイト」「ディスプレイ」「ネットワーク」広告等様々ありますが、そこにとらわれていれば、従来のメディアとあまり変わり映えしません。マネタイズする手法はその空間をどうブランディングするかで広がってくる部分なので、もっとでっかく考えていい部分なんだと気付きました。
⑥人間を介さないシステムだけで、読者が満足する日は永遠にこない
ハフィントン・ポストでも、トップ記事を決めるのはあくまで人間。
情報が溢れるなかで、編集者の必要性はこれからむしろ増す。
かっこいい。かっこよすぎる。本当にそう思う。
⑦文章術を学ぶには『文章読本』
ここ数年、天声人語を書き写すノートが売れているそうですが、私にはそれが魅力的な文章習得法とは思えません。文章術を学ぶには、谷崎潤一郎の『文章読本』がいちばんです。
なかなか年期入ってそうですが、読む。全然読む。
⑧マネタイズは二の次
私は、Webメディアの担当になった当初、収益は度外視してとにかく読者を増やす作戦に出ました。その方向性は正しいと思っていますし、今後も変えるつもりはありません。ネット企業を見ても、まずはユーザーの増加に全力投球し、マネタイズを二の次にするのが王道です。焦って金儲けに走るネットサービスは、ユーザーにそっぽ向かれてしまいます。
そもそも、メディアにとって、利益は最終目標ではなく、あくまでよいコンテンツを創るための手段です。
個人的には、「10億円の利益があって10万にしか読まれないメディア」より「1億円の利益でも100万人に読まれるメディア」のほうがいいとさえ思っています。
かっけえ。
あー面白かった。
おわり